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ヒビノコエ

日々徒然与太話やちょっぴしミリタリネタなど好き勝手に呟く場所。腐発言、オタ発言注意ですよ。
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ラスト・キッス~もう一度貴方と~ 

零小説第5弾はまた刺青ノ聲なんですが(苦笑)
今回は怜視点シリアスです。
怜さんってお酒好きそうなイメージが何故かあるんですが、どうなんでしょう?
飲み屋なんかでは女性の割にキツイお酒を頼んでそうで、今回そうしてみました。
ちなみに管理人は洋酒より和酒派です(笑)
洋酒も嫌いではないんですが、くっさい芋焼酎をロックで呑むのが好きだったりします。
おっさんか(笑)

ちなみに(※以下ちょっとネタバレにつき反転)
ラスト・キッスはラムベースのショートカクテルで、
ホワイト・ラム、ブランデー、レモンジュースの三種類をシェイクして作る辛口のカクテルです。
アルコール度数も高めの30%強。辛くすっぱい上ラムベースなのでクセは結構あったかと思います。
恋人の別れを酔いで和らげる。ことと、クセのある辛口のカクテルで、忘れられないものにする。ことが含まれているように、管理人は思っております。
まぁ、怜さんは作中一口も飲まずにバーを飛び出してますが・・・(笑)


では、本文はいつも通り追記からどうぞっ

薄暗く、橙色の灯りが頼りなげに点るそのバーに、黒澤怜はただ一人ぼうっと座って酒を嗜んでいた。
隠れ処的なそのバーはいつも空席が目立ち、繁盛しているようには見えないのだが、落ち着き洗練されたその雰囲気と出される酒の美味しさ、そして寡黙ではあるが人情のあるマスターがよい味となって、怜のお気に入りの場所となって久しかった。
手元のグラスの中で、丸く削られた氷がくるりと回る。
一口飲んだだけで放置されたバーボンは濃い琥珀色から橙へと薄れていたが、頬杖をついたままの怜はそれに見向きもしないでどこか考え込んでいるようだった。

あの、眠りの家での出来事から月日が流れた。
もう、あの眠りの家へ迷い込むこともなければ、刺青が浮かぶこともない。
深紅はまた徐々に明るい笑顔を見せてくれるようになり、螢は時々澪をつれて黒澤邸へ顔を出しにきてくれる。
あれから、避けていた人を被写体とする仕事も徐々に入れるようになり、以前の生活へ戻りつつある。

でも、あなたがいない・・・。

怜は、物憂げだった瞳を細め、何かに耐えるように小さく一つ息を吐いた。

ぼんやりと考えるのは、同じ窮地を駆け巡った深紅と螢の事。
深紅は、兄・・・真冬のことを徐々に怜に話してくれるようになった。螢が真冬の友人ということもあり、二人は時折怜のわからない話で盛り上がることがある。
兄のことを、兄を置いてきてしまったことを悔やんでいた深紅だったが、徐々にそれを受け入れ悩まないようになっていったように思える。怜の前に見せないだけかもしれないが。
螢は、追っていたのが澪だったということもあり、失うことなく二人で生還した。
優雨と、深紅の兄、真冬とも親しかったそうで、怜の知らない優雨の事をたくさん話してくれた。
婚約して式を控えていたのに、まだ知らない優雨がいることに少しの戸惑いと寂しさにも似た感情を浮かべたこともあったけれど、今はそれも受け入れられている。
螢は親友を二人も失った反動であの出来事のあと少し塞ぎこんだようだが、怜や深紅と会う時にはそれを微塵も感じさせない明るい態度で、場の雰囲気を引っ張っていっていたように思える。
塞ぎこんでいたというのは、あとでこっそりと澪から聞いたものだ。しかし、最近は吹っ切れたのかそれも少なくなり、作家としての仕事を頑張っているようだった。

氷から零れ落ちた水分を含んで色あせたバーボンを一口含み、怜はまた小さく嘆息する。
もはや香りも味も殆ど飛んでしまったそれは、怜の胸中と酷く似ていた。

ねぇ、優雨・・・
私・・・やっぱり・・・・・・

胸中に浮かんだ台詞を打ち消すように頭を振り、グラスを置く。
それだけは、考えてはいけない。
彼を追いかけようと思えば追いかけられた。
でも、追いかけなかった。
彼は『生きてほしい』と言った。全て『わかっている』とも。
彼の想いを裏切るわけには、いかない。
彼の欠片を消すわけには、いかないのだ。

しかし、それでも胸にぽっかりと開いた穴のような空虚感は、仕事をしても酒を嗜んでも、皆と楽しく過ごしても消えることはない。
ただただ、寂しいという想いが胸を支配する。
もう、彼に会うことは出来ない。
もう、彼に抱きしめてもらうことも、彼の手を握ることも、彼のぬくもりを感じながら眠ることも出来ないのだ。
時折、どうしようもなく寂しくなって優雨のベッドで眠ることがあったが、懐かしいはずのその場所はどこか冷たく、もはや彼の気配も匂いも消えうせて余計に悲しみと涙が流れるだけだった。

「・・・・・・優雨・・・っ」

名前を呼んでしまえば、胸の奥底においやった感情が堰をきったように押し寄せ、視界がぼやけて滲んでしまう。
こんなところで泣いちゃいけない。子供じゃないんだから。
必死で唇を噛み、零れようとする涙を堪えているその姿はさぞ滑稽だっただろう。
マスターが少し皺が入り強張った手をそっと伸ばし、バーボンが入っていたグラスを下げていく。
何か、声をかけられるのではないか。どう応えればいいのか。どこまで話せばいいのかとしばし思考を廻らしていたが、マスターは何も言わずに何かを用意しているようだった。
目の端に浮かんだ涙を指先で拭い、マスターの方へ顔を上げると、彼は丁度シェーカーを手に取り、シェイクする動作をしていた。
カランカランとシェーカーの中でぶつかる氷の規則的な音だけが響く静かな店内。
渋いような、苦いような顔をしたマスターの顔をぼんやりと見つめていると、用意されたカクテルグラスに注がれたのは半透明のカクテル。
普段頼むような色物のカクテルとは違い、どこか無機質でもあるそれをそっと怜の前に差し出し、マスターは一言小さく

「ラスト・キッスです」

そう、告げた。

「ラスト・・・キッス・・・」

「ラムベースのカクテルで・・・別れや悲しみを表します。特に恋仲の意中と別れた最後の夜に選ばれるカクテルでも、ありますね・・・」

静かにそう語るマスターの顔が少し優しく和らぎ、少し考えてから口を開く。

「出会いがあれば、別れもあります。終わりは始まりとよく言いますが・・・この世の全てに意味があり、貴女に訪れた別れも何か意味があったはずですよ。これから、何かが始まる為の・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

「そのようなことを仰せつかって、あちらのお客様から貴女にこれを出すように、と・・・」

マスターが入り口横の座席を指差し、そう告げる。

あちらの、お客様・・・?

怜は怪訝な顔をしてカクテルを見つめた。
ここは半地下のバーで、入り口は重厚な造りな上によくあるベルが取り付けられていて、誰か客がやってくればその音で中にいる人間全てにその存在が知れ渡る。
けれど、怜がここへやってきてから、そのベルの音が響いたことはない。

「・・・・・・っ」

その思考に行き着いた瞬間、怜は弾かれたように顔を上げてその座席へと目をやる。
そこには、誰もいない。誰かが滞在したような痕跡すらなかった。
けれど、そのすぐ横の重厚な扉からみえたのは、見覚えのある人影。

「・・・っ待っ!」

待って。そう告げる前に扉は大きなベルの音をたてて閉まり、再び静寂を招き寄せる。
怜は何も持たずに何も考えずにその扉を開いて駆け出していた。

待って。
待って。
待って。行かないで。
イカナイデ
マッテ
マッテオイテイカナイデ

息を切らせて階段を駆け上がる。
暗く沈んだ街並みに闊歩する人影はどこか黒く、まるで自分が迷子のように感じてしまう。
それでも怜は走り続けた。
そうしないと、また置いていかれると強迫にも似た感情を感じてただひたすら走っていた。
見慣れた、青い人影。愛してやまない人の、後姿。それを見つけ、息を切らして走り寄る。

「待って・・・!優雨!置いていかないで!」

涯で出会った時のように、歩みを緩めて立ち止まり振り返る愛しい彼の胸に飛び込むように駆け寄ると、彼はまるで繊細なものを扱うかのように、優しく怜を抱きしめた。

「行かないで優雨・・・っ。寂しいよ・・・苦しいよ・・・っ」

そんなことを言ったところで彼が戻ってこれるはずもなく、また彼を困らせるだけだとしても、それでも怜は想いをぶつけることしか出来ない。
いくら自立して仕事もこなし、助手を抱えていても、所詮はまだ23の女性と呼ぶよりはまだ女の子とも呼べる年頃なのだ。立ち直ろうとしても、忘れようとしても、強く残る負の感情を早々昇華できるわけもない。

「ごめん・・・ごめんなさい・・・っ。でもっ・・・寂しいの・・・っ私・・・っ」

一度溢れてしまった気持ちは簡単に治まらず、堰を切ったように溢れ出てくる。
そんな怜を抱きしめたまま優雨は優しく怜の髪を撫でた。

「・・・・・・ごめん・・・」

そう言われ、怜はハッと顔を上げる。
悲しそうで寂しそうな、眉尻を下げた優雨がそこにはいた。

「ごめん・・・・・・怜・・・。それでも、僕は・・・行かなくてはいけない・・・・・・」

怜の目から、ほろほろと涙が零れる。
違う。私は彼を悲しませたかったんじゃない。
ただ、ただ気持ちを伝えたかっただけなのに。
頭を横に振り、謝らないでと意思を表示したつもりだったが、それは子供が駄々をこねて行くなと言っているようにしか見えず、怜は優雨を更に強く抱きしめてしゃくり上げながら思いつく限りの言葉を紡ぐ。

「違う・・・ごめんなさいっ・・・。違っ・・・・・・っただ・・・私は・・・・・・」

「わかってる・・・わかってるよ・・・」

全てを言い切る前に優雨は優しく囁き、あの時のように涙を指先で拭ってくれる。
そして、そっと頬を撫でながら、あの時には聞けなかった言葉を繋げた。

「愛していた・・・いや・・・愛しているよ・・・怜・・・」

「・・・っ優雨・・・っ!!」

その言の葉を聞いた途端、怜の視界がぶわりと滲む。
ああ、だめだ。優雨の顔をちゃんと見ていたいのに。
頭ではそう思うのに、感情がついてくるはずもなく、再び涙がとめどなく溢れてくる。
そんな怜にそっと微笑み、頬に手を置いたまま優雨は優しくその唇を塞いだ。

ああ、ごめんなさいごめんなさい
一緒にいけなくてごめんなさい
泣いてばかりでごめんなさい
弱くてごめんなさい
ああ、ちがう
ちがうそうじゃない
ありがとう
こんな私を好いてくれてありがとう
こんな私を愛してくれてありがとう
出会ってくれてありがとう
慰めてくれてありがとう
生きてほしいって言われて
悲しかったけど、嬉しかった
ありがとうありがとう
愛してる愛してる
優雨、大好きよ・・・

優しい彼の温度を唇に感じながら、胸を巡るのは彼を愛しているという感情。
その想いと涙が交ざり交ざって、怜はそのまま意識を深く深く沈めていった。



「怜さん、朝ですよ」

ドアの向こうから、深紅の声が聞こえる。
ふっと目を開けてみればそこは怜の自室で、カーテンの隙間からは初夏の陽射しが差し込んでいた。

「怜さん・・・?」

「・・・・・・何でもない・・・っもうちょっとしたら・・・行くから・・・っ」

ドアの向こうの深紅に何とか返事をし、例は顔を手で覆う。
指の隙間からはまた涙が零れ落ちていた。

その日の夜。
仕事が終わった怜は、深紅を先に家に帰し、見慣れた街を歩いていた。
少し外れた雑居ビルにある階段をコツコツと静かに下りる。
下りた先にあるのは、重厚な扉。開ければカランカランとベルが乾いた音を立てる。
橙色の灯りの向こうに立つマスターに少し微笑みながら、怜は店内へと歩を進めた。

「ね、マスター。ラスト・キッスを一つ頂戴」




 ラスト・キッス~もう一度貴方と~

終わりは始まり
 貴方と終わり貴方と始まる為に


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零の親友トリオとSIREN2の自A隊をを心より愛するただの腐ったナマモノ。
特にヘタレ螢叔父さんが大好物の様子。
SIREN2では沖三永スコップ。
ホラー、サスペンス、オカルトが大好物の物書きナマモノですが、怖いのは苦手です。
もっと文章上手くなりたいと思いつつ、閃きで書いてるので一向に上手くならない様子。

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