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日々徒然与太話やちょっぴしミリタリネタなど好き勝手に呟く場所。腐発言、オタ発言注意ですよ。
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君がため 

そんなわけで、零小説1作目です。
ブログで小説公開はほぼ初めてなので、色々やり方を模索していくかもです(・ω・)
螢×鏡華のシリアス話。エログロ一切なし。若干の流血表現アリ・・・かな?
ヘボですがそれでもよろしい方は追記よりどうぞ。

眠りの家着物の間。
いつ通ってもそこは気持ちのいい場所ではない。螢は扉の前で一つ深い息を吐いて少し汗ばんだ額を手の甲で拭った。
ここは、いつ何時入っても、長い黒髪を揺らめかせたあの怨霊が螢を待ち構えているせいで、皆神村へ行くため通るだけで螢は命を懸けなければいけない。

「・・・・・・また、いるのか・・・?」

出来るだけそうっと扉を開ける。そうしたところで無駄だとは分かっているのだが、やはり見つかりたくないと思う人間の心理がそうさせるのであろう。螢はそろりと室内へ滑り込み、着物の影から影へと隠れながら部屋を渡って行った。

「・・・・・・戻ってくるって言ったのに・・・!」

鏡台の前で揺らめく影がそう叫び、徐々に人の形へと具現していく。
長い漆黒の髪を揺らし、青白い顔をした怨霊―――久世鏡華
螢は息を呑み、反射的に射影機を構えた。ファインダー越しに見える顔を隠して泣く鏡華の周りにはどす黒い空気が流れ、射影機のフィラメントも危険を示す赤い光を煌々と照らしている。
じりじりと後ずさりながら鏡華をファインダーで捕らえ、シャッターを切る。射影機の扱いも大分慣れてきてはいたが、それでも霊感がなく、霊力が溜まらない螢にとって霊との戦闘は毎回手に汗を握り肝を冷やすもの以外の何物でもない。

「・・・・・・秋人様・・・っ」

まるで涙のように目から血を流し、手を振りかざして追いかけてくる鏡華をすんでのところでかわし、フィラメントを頼りに次の出現場所を探す。

「くっそ・・・どこだ・・・っ」

吊られている沢山の着物が視界を邪魔し、怨霊となって身体が透けている鏡華は非常に探しづらい。
射影機を構え直し、辺りをぐるぐると旋回するように鏡華を探していると、不意に足がガタリと側にあった琴を蹴り、びぃんと濁った弦の音が足元で響いた。
 
久世鏡華。この眠りの家の当主久世夜舟の娘であり、想い人柏木秋人の帰りを待ちわびながら死んだ女性。澪を追う為屋敷のことを夢の中でも現実世界でも調べるうちに、分かったことが数多くあった。
久世家のしきたりのせいで、秋人と共に行けなかったこと。秋人は鏡華の元を去ったのではなく、秘密裏に夜舟に殺害されていたこと。その漆黒の黒髪を秋人が褒めてくれた為、毎日櫛を通して手入れをし、抜け落ちた髪の毛も大事にとっていたこと。秋人に聴かせる為に毎日琴の練習をしていたこと。
秋人と別れてから亡くなるまでの間、どれほど恋焦がれて待ち焦がれていたかは螢にはわからなかったが、とてつもなく長い時間をそう暮らしてきたことは、文献や眠りの家での体験で身に沁みるようにわかった。
それほどまでに焦がれた秋人に瓜二つな螢が、秋人の遺品である射影機を構えてやってくるのだから、恨み言を言いたくなるのも理解できた。

「もう、離さない・・・っ」

琴を眺めながらそんなことをぼんやりと考えていたせいで、鏡華のその声が響いた時にはすでに遅く、真正面から鏡華に抱きつかれていた。

「ぐああぁ・・・っ!」

まるで生気を吸い取るような鏡華の強い抱擁に顔が歪み、苦痛の声が口から漏れる。ギリギリと締め上げられれば体が悲鳴をあげ、体力をじわじわと奪われていく。
痛みに呼応するかのように、青黒い刺青が全身に広がり、そこからも痛みを発していく。

「戻ってくるって言ったじゃない・・・!」

抱きつく鏡華の声が悲痛さを増し、怒りと悲しみに語尾が震えている。
ポタポタと小さな音を立てて畳を濡らすのは、鏡華の血なのだろうか、それとも悲しみなのだろうか。

「ぐ・・・っぅ・・・!!」

刺青の刺すような痛み。引き裂かれるような苦しみ。
鏡華の抱擁による痛み。絞め殺されてしまうような苦しみ。

「う・・・っ!ぇっく!・・・戻って・・・っくるって・・・・・・言ったっのに・・・!言った・・・っのに!」

いつしか鏡華の声は嗚咽へと変わり、締め付けていた腕の力も随分と弱まっていた。

「あきっと・・・さま・・・っ!・・・えっく・・・ひっく・・・・・・!もどっ・・・ぇっ・・・」

痛い。
刺青が痛い。広がる刺青が。
痛い。痛い。
 

ああ、この痛みは鏡華のものだ。


 
苦痛に歪む顔を鏡華に向け、得心したように螢は眉尻を下げた。そして、そのまま鏡華を強く抱きしめる。

「・・・・・・っっ!?」

「・・・っもう・・・泣かなくていい・・・」

驚く鏡華に声をかけ、強く強く抱きしめる。刺青はますます広がり色濃くなっていたが、螢は構わず鏡華を抱擁し続けた。

「秋人・・・様・・・・・・っ・・・」

強く鏡華を抱きしめたまま、まわした手で射影機を鏡華の頭上に掲げ、シャッターを押す。
強化レンズの光が辺りを照らし、除霊の力が鏡華に降り注ぐ。
強烈な除霊の力を受けた鏡華は目を見開き、螢の胸に倒れこむように崩れ落ちた。

「もう・・・泣かなくていいんだ・・・・・・。ゆっくり・・・休むといい・・・・・・。大丈夫だ・・・きっと、想い人の処へ逝ける・・・」

ゆっくりと目を閉じてゆく鏡華の黒髪をそっと撫でてやり、優しく囁くと、鏡華は虚ろな目を螢に向けてほんの少し微笑んで口許を動かした。

大丈夫・・・ちゃんと逝けるさ・・・。向こうできっと、彼も君を待っている・・・。

ぐったりと崩れ落ちた鏡華の体が徐々に薄くなり、最後には景色に溶け込むように消えていった。
それを見届けてから螢はゆっくりと立ち上がり、一つ息を吐く。


『ありがとう・・・ございます・・・・・・螢さま・・・』


最後に聞こえた鏡華の声が、頭の中に木霊する。
やはり、思い人と螢は別人だと、わかっていたのだ。わかっていながらも、同じ顔をし同じ射影機を構える彼を秋人の代わりに想い、怒りをぶつけないと自分を保てなかった。
彼女のそんな強い想いに自分は応えられたのだろうか。果たしてこれでよかったのだろうか。
割れた鏡台とそこに吊られた漆黒の髪を見つめながら、螢はしばらくそこから動けずにいた。



 
  がため

君の為になら俺は痛みに耐えよう
 君が笑って逝けるなら、俺はピエロになり続けよう

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遮那々(しゃなな)
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性別:
女性
職業:
プチ軍オタ主腐
趣味:
ゲーム、物書き、妄想、自衛隊イベント探索、お菓子作り
自己紹介:
零の親友トリオとSIREN2の自A隊をを心より愛するただの腐ったナマモノ。
特にヘタレ螢叔父さんが大好物の様子。
SIREN2では沖三永スコップ。
ホラー、サスペンス、オカルトが大好物の物書きナマモノですが、怖いのは苦手です。
もっと文章上手くなりたいと思いつつ、閃きで書いてるので一向に上手くならない様子。

ミリオタ女の下っ端端くれでもあるので、時々そういうネタも投下するかも?右でも左でもありませんよ!

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