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ヒビノコエ

日々徒然与太話やちょっぴしミリタリネタなど好き勝手に呟く場所。腐発言、オタ発言注意ですよ。
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眠れ眠れ彼の胸に 

SIREN小説始めました。
第一弾は(多分)ノーマル向け、永井君と闇沖田さんのお話です。
ほんの少しグロ注意、22:00『特攻』シナリオに於いての終了条件達成未遂を妄想した物です。
Pixivにも書きましたが闇霊に体を乗っ取られる形でもかつての仲間に再会出来るのなら、もしかすればそれは絶望じゃないのかもしれません。そうじゃないとゲーム中の永井君が救われなさ過ぎて泣けてきます・・・

SIREN小説も零小説同様本文は追記からどうぞ

闇に紛れて闇を倒し、いつしか永井は小運動場の前に立っていた。
そうっと開け放った扉の向こうに闇人の姿が見える。
気づかれないようライトを消し、銃を構えて背後を狙う。
息を止めて引き金を引けば、その闇人はあっさりと煙を上げてその場に崩れた。

そうだ、闇人は人間にとっての敵。一切の感情を取り払ってこうするべきなのだ。

ライトを再び点灯させ、慎重に闇人に近づく。
そっとライトでその倒れた背中を照らしてみても動くことはなく、闇霊が再びこの遺骸に取り付くまでは立ち上がることはないだろう。
ほんの少し安堵の表情を浮かべ、小運動場を後にしようとした永井の足に、何か大きな物が当たってガシャンと派手な音を立てた。
びくりと体を震わせ、音がした方へライトを向けるとそこにあったのは、永井もよく知る物―――89式小銃だった。

「・・・そんな・・・・・・っじゃあこれは・・・」

かつて小隊を組んだ仲間は最早全て死に失せた。

ある者は輸送ヘリ墜落時に。
ある者は自分の手で。
ある者は自分のせいで。

仲間の何人かは、すでに闇人として永井の前に立ちはだかり、聞き覚えのある声で襲い掛かってきていた。
自分で手をかけた上官は、もう闇人と化しているのだろうか。
そう思えば、ただ一人屍人として出会ったはずの仲間の闇人姿を見たことがなかった。

「・・・・・・ぉ・・・お・・・・・・きた・・・さ・・・・・・っ」

転がった物と同じ89式小銃が小刻みに震えた。
ライトに照らされる遺骸が今にも動き出しそうな錯覚を覚える。
手にしたTNTを強く握り締めようとしたが力が入らない。
そこで、小銃ではなく自分自身が震えているのだとようやく気づき、永井はかぶりを振った。

「しっかり・・・しろ・・・・・・っ俺!沖田さんは死んだ!沖田さんは死んだ!沖田さんは死んだ!!これは沖田さんなんかじゃない・・・!!」

悲痛ともとれる叫び声は辺りに木霊し、闇に掻き消える。
汗ばんだ手がTNTを取りこぼしそうになり、慌ててきつく握り締めた。
手が白くなるほど強く力を込め、震える小銃の銃口を倒れた闇人に向けたまま、永井は唇を噛み締める。
その刹那、闇人―――沖田が小さく身じろいだ。

「っ・・・・・・永井?」

こうべを上げ、ゆっくりと立ち上がりながら小首を傾げる動作は、生前の沖田と寸分違わない。
にやりと厭らしい笑みを口許に浮かべたまま、沖田は足元をきょろきょろと見回す。
武器を探しているのだと、咄嗟に足元に転がった小銃を永井が踏みしめるのと沖田がそれに手を伸ばすのはほぼ同時だった。

何度か小銃を拾おうと沖田は指先に力を入れてカリカリとその銃身を掻いていたが、やがて諦めたのかその身を起こして永井を真に捉えた。
暗く淀んだ瞳が、永井を捉える。

「永井ー俺だよ、俺」

口許に笑みを浮かべたまま、沖田は言う。生前と同じ口調で永井を呼ぶ。

「お・・・きたさん・・・・・・」

これは沖田であって沖田でないと、わかっているはずだった。沖田の『カタチ』をした沖田とは『チガウ』何かなのだと、理解しているつもりだった。
だがしかし、震える体は鉛のように重く動かない。
突きつけたままの銃口がわなわなと目に見えて震える。

「永井・・・・・・」

沖田が、土を踏みしめ一歩永井へ歩み寄る。
トン、と小銃の先が沖田の胸元に押し当たった。
今引き金を引けば、確実にこの闇人を再び葬り去ることが出来る。
簡単なことだ、引き金を引けば良い。後は自動的に銃弾が彼を撃ち抜いてくれる。
だが、そんな簡単なことさえ今の永井には実行することが出来なかった。

一度は屍人となった彼をその銃弾で撃ち抜いた。生々しい血を流しながら倒れたその姿がまだ目の裏に焼きついていて、まるで自分が彼を『殺した』かのような錯覚を覚え、銃を持つ手が震えたのを思い出す。
彼はもう既に『死んで』いて、永井がそれを倒したところで『殺した』ことにはならないのだが、そんな理論に感情がついてくるわけもない。

「・・・殺らないのか?」

不意に、沖田が口許を笑みに歪ませたままそう問うた。
それと同時に両肩を強く掴まれ、首筋に噛みつかれる。

「あぁぐ・・・っぅ!」

耳元のすぐ側で肉を噛み締める湿った音が響く。首筋に感じるのは痛みというよりはもはや灼熱だった。

「ぐ・・・ぁあああ!」

持てる力を振り絞り、咄嗟に沖田を突き飛ばしてその場に片膝をつく。
首筋を伝う血がじわじわと迷彩服を朱に染め、全身を伝って土を黒に染めていく。
荒い息を吐いて見上げてみれば、血に塗れた口許を上げ沖田は酷く穏やかな笑みを浮かべて永井を見下ろしていた。

「なあ、永井。もういいだろう?もう、休んでもいいはずだ」

恐ろしい程穏やかな声で、悍ましい程優しい笑顔で、沖田は謳うように言葉を紡ぐ。

「何・・・言って・・・・・・」

「もう疲れたろう?もう休みたいだろう?なあ、永井・・・お前はもう独りだ」

独り。
その言葉が永井に突き刺さった。
かつて小隊を組んだ仲間は最早全て死に失せた。
ある者は輸送ヘリ墜落時に。
ある者は自分の手で。
ある者は自分のせいで。
気がつけば、生き残っているのは自分しかいない。

「もう足掻き疲れたろう?独りで生き残ったところでどうする・・・?もう、休んでしまえよ」

かつての先輩と同じ声音で、かつての先輩なら断じて言わない言葉を紡ぐその姿を見上げ、永井は瞳を揺らした。

沖田さんなら、「挫けるんじゃない」「根性出せ」といつも言ってきていた。
ならば、この同じ顔をしたこいつは誰だ。

流れ出た血がぬるぬると身体を滑る。それと一緒に意識さえもぬるりと滑り落ちて朽ちていきそうだった。
貧血した頭ではいつも通り考えることも出来ず、目の裏に焼きついたかつての先輩の姿さえ霞んでいくような気分だった。

「永井は頑張った。誰よりも強く誰よりも逞しく・・・。でも、もういいんだよ。もう、休んでもいいんだ・・・」

そう語り掛けられ、ふわりとした感触が頭にかかる。
それが革手袋の手で優しく頭を撫ぜられたのだと気づくのに暫く時間を要した。
革手袋の感触がどこか心地よく、訓練で良い成績を残した時もこの人はこうやってよく頭を撫でてくれた・・・そんなことをぼんやりと考えてしまう。

「えらいぞ、永井。よく頑張った」

ああ、そうだあの時も沖田さんはそう言ってくれた。

『よく頑張った。今日はもうゆっくり休めよ?』

ああ、そうだ沖田さんはいつもそうやって気遣ってくれた。

ならば―――

根性を出せ挫けるなと言っていたのは誰だったのか。

「永井・・・・・・おいで」

顔を上げてみれば、いつものように穏やかな優しい笑みを浮かべた沖田が膝をつき、永井と同じ目線で両腕を広げ、そう囁いていた。

「こっちにおいで・・・。こっちには、みんな居る。俺も、三佐も他の皆も・・・だから」

おいでとその先輩は優しい笑顔で囁く。記憶の中の彼と寸分違わぬ声で仕草で。

「そっちに・・・みんなが・・・・・・」

「そうだよ。一緒に行こう永井。ずっと、一緒に居よう・・・皆と・・・ずっと一緒に」

ああ、そうか。皆がそっちにいるなら、行かなきゃ・・・。
まだ訓練の途中だった。三佐も一佐も怖いから・・・ちゃんと成績残さなきゃ
いい成績残してまた沖田さんに褒めてもらおう。よく頑張ったって・・・

「おいで、永井」

そう言って広げられた腕に、永井はふわりと飛び込んだ。
土と埃と血の臭いに混じって、懐かしい尊敬する先輩の匂いも確かに、した。
もう、何が思い出で何が現実かわからない。

「沖田さん・・・沖田さん・・・・・・沖田さん・・・っ」

縋りつくかのように沖田を抱きしめ、子どものように沖田の名前を呼ぶ。
そんな永井を優しく抱き返し、沖田はその頭を撫でた。
生前の沖田がそうしていたように。

「沖田さん・・・俺・・・凄く、疲れました・・・・・・。少し、休んでいいですか・・・」

「ああ、もう休んでいい。眠っていいんだよ・・・おやすみ・・・永井」

微笑を浮かべて沖田の胸に顔を埋めて目を閉じる永井の後頭部に、冷たい銃口が突きつけられる。

深い眠りに堕ちようとしていた永井の耳が最期に聞いたのは、穏やかな沖田の声と鋭い銃声だった。



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職業:
プチ軍オタ主腐
趣味:
ゲーム、物書き、妄想、自衛隊イベント探索、お菓子作り
自己紹介:
零の親友トリオとSIREN2の自A隊をを心より愛するただの腐ったナマモノ。
特にヘタレ螢叔父さんが大好物の様子。
SIREN2では沖三永スコップ。
ホラー、サスペンス、オカルトが大好物の物書きナマモノですが、怖いのは苦手です。
もっと文章上手くなりたいと思いつつ、閃きで書いてるので一向に上手くならない様子。

ミリオタ女の下っ端端くれでもあるので、時々そういうネタも投下するかも?右でも左でもありませんよ!

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